事業を続けていると「黒字倒産」という言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。利益が出ているにもかかわらず、資金繰りの不備から会社が立ち行かなくなるケースは珍しくありません。今回は、私自身が体験した「資金繰りの失敗」から学んだポイントを共有します。
第1章 利益が出ているのに資金が足りない現実
「黒字なのに会社が潰れる」という話を、私は最初ピンときませんでした。
けれど実際に事業を回していくと、数字の上での利益と、手元に残る現金には大きな差があることを痛感しました。
たとえば、売上が100万円あっても、入金は翌月末。
一方で、仕入れや家賃、光熱費、人件費は今月中に支払わなければなりません。
その結果、帳簿上は黒字でも現金がマイナスという状態が簡単に起きてしまいます。
特に創業間もない時期は、売上が伸びていることに安心して支出を増やしがちです。
しかし「今、財布にいくら現金があるか」を意識せずにいると、急に支払いが回らなくなる。
これこそが資金繰りの恐ろしさです。
筆者のひとこと
数字が伸びていても「資金ショート」という危機に直面したとき、私はようやく理解しました。会社は利益ではなく「現金」で回っているんだと。
第2章 資金繰りに失敗する原因とは?
資金繰りに失敗するには、いくつか典型的なパターンがあります。
私自身の体験も含めて、代表的なものを紹介します。
1. 入金サイトと支払サイトのズレ
売掛金の入金が60日後なのに、仕入れや外注費は30日以内に支払う必要があるケース。
この「ズレ」が積み重なると、常にお金が不足します。特に小規模事業では命取りになりかねません。
2. 利益率の低さ
「売上は大きいのに現金が貯まらない」という場合、利益率の低さが原因です。
薄利多売のビジネスは、キャッシュフローが常にギリギリになりやすい構造を持っています。
3. 計画の甘さ
「今月は売上がこれくらいだから、来月はもっと伸びるだろう」という楽観的な見積もり。
しかし現実はそう甘くなく、予想より入金が遅れたり売上が下がったりすると、一気に資金繰りが崩壊します。
4. 過剰投資
「今のうちに仕入れを増やそう」「先に設備投資をしておけば安心」と考え、資金を先に使い切ってしまうパターン。
未来を見越した投資は大切ですが、短期的な資金繰りが悪化すると、結局その投資が回収できなくなるリスクがあります。
筆者のひとこと
私は「未来志向」な性格が災いして、投資を先行させすぎて資金がカツカツになった経験があります。強みが裏目に出る瞬間は本当に怖い。今は「未来」だけでなく「今の現金」を天秤にかけて判断するようにしています。
第3章 資金繰りで失敗しないための3つの工夫
資金繰りに失敗した経験から、私が実際に取り入れて効果を感じている工夫を紹介します。
ポイントは「見える化」「余裕」「関係性」の3つです。
1. 資金繰り表をつける
毎月の入出金を「予測」と「実績」で管理することが重要です。
- 仕入れや外注費、家賃などの固定支出
- 売掛金や補助金などの入金予定
- 口座残高の推移
これらを1ヶ月先だけでなく、3ヶ月~半年先まで見える化しておくと、資金ショートの兆候が早めに掴めます。
エクセルやGoogleスプレッドシートを使えば十分管理できますし、クラウド会計ソフトと連動させるのもおすすめです。
筆者のひとこと
私は当初「帳簿をつけているから大丈夫」と思っていましたが、帳簿は過去の記録でしかありません。未来を予測する資金繰り表が、会社を守る“地図”だと気づきました。
2. 余裕資金を持つ
「最低でも3ヶ月分の固定費」を現金で確保することを目標にしました。
例えば、毎月の固定費が50万円なら、150万円をキャッシュで用意しておくイメージです。
この余裕資金があるだけで、突発的な売上減少や入金遅延が起きても、慌てる必要がなくなります。精神的にも安定し、冷静な判断ができるようになります。
筆者のひとこと
以前は、口座残高がギリギリでも「なんとかなる」と思っていました。でも余裕資金を持ってからは、常に安心感があり、挑戦的な決断もできるようになりました。
3. 銀行との関係づくり
資金が足りなくなってから慌てて銀行に行っても、すぐには融資を受けられません。大切なのは、普段から信頼関係を築いておくことです。
- 定期的に試算表や決算書を持参し、事業状況を説明する
- 融資が不要なときでも銀行担当者と顔を合わせておく
- 小さな借入から返済実績を積み重ねて信用をつける
こうした日々の積み重ねが、いざというときに大きな力になります。
筆者のひとこと
私は「困ったら銀行が助けてくれる」と思っていましたが、実際はそう簡単ではありません。今では「困る前から相談する」を徹底しています。
まとめ
資金繰りで失敗しないためには、
- 資金繰り表で未来を見える化する
- 最低3ヶ月分の余裕資金を持つ
- 銀行と日頃から関係を築く
この3つが不可欠です。
「黒字なのに倒産」という事態は、決して他人事ではありません。
私自身の失敗が、これから挑戦する方の「予防策」になれば幸いです。
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